県に『アブサンショウウオ』の保護・保全に関する要望書を提出

本日、県に「山口県阿武町に生息する『アブサンショウウオ』の保護・保全に関する要望書」を提出しました。県の環境生活部自然保護課と環境政策課アセス班の各担当者の方に対応していただきました。6月中に文書による回答を頂くことになっています。
要望書は下記のとおりです。***********
山口県阿武町に生息する「アブサンショウウオ」の保護・保全に関する要望書】
山口県知事 村岡 嗣政様
2022  年 6月2 日
阿武風力発電所建設を考える会代表 浅野容子
阿武・萩の未来を良くする会代表 中村光
阿武風力発電所ちゃあなんか考える会代表 宮内欣二
山里フォーラム のんたの会(あったか村)白松博之
日頃の県民のためのお働きに感謝いたします。
私たちは、現在、HSE社が阿武町内で計画している(仮称)阿武風力発電事業が、阿武町や萩市の豊かな自然環境と生態系に大きな影響を及ぼすのではないかと危惧しています。今回は、事業予定地内に生息する絶滅危惧種アブサンショウウオの保護並びに生息地の保全について要望いたします。
          記
アブサンショウウオが絶滅危惧種として保護され、生息に不可欠な湿原が保全されるよう必要な施策を早急に実施してください。生息地で事業が計画されている(仮称)阿武風力発電事業に対して、知事意見においても触れておられているところですが、より一層慎重な対応をお願いいたします。
アブサンショウウオは2019年に京都大学研究チームにより発表された論文(注1)により、山口県域において生息していたカスミサンショウウオの新種として確認されました。発見した松井正

京都大学名誉教授は「2種とも山口固有と言ってもいいぐらい貴重な両生類。早急に(条例などで)保護するための対応をして欲しい」と指摘されています(朝日新聞2019年4月24日:添付資料1)。
その後、2020年3月に発表された環境省レッドリスト2020補遺資料では、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い絶滅危惧種ⅠB類(EN)に分類されました。さらに、2022年1月には「絶滅のおそれのある野生動物の種の保存に関する法律」に関する法律施行令の一部が改正され、アブサンショウウオも特定第二種国内希少野生動植物種として追加されました(注2)。選定の要件は「分布域が限定されており、かつ、生息地等の生息、生育環境の悪化により、その存続に支障をきたす事情がある種」です。
山口県立博物館の公式サイトには中学生による論文「アブサンショウウオHynobius abuensisの地衣状斑紋」(『山口県の自然』第80号)が掲載されています。論文は「小グループに分化したHynobius属は限られた環境で生まれた適応種と考えられる。その環境が失われれば、その種が失われることにつながる高い危険性をはらんでいることが分かった。この貴重な地域の宝を、これからも大切に見守っていかなくてはならないと思った」と締めくくられています。2021年10月の山口県のプレス発表では、高校生によるアブサンショウウオの研究を、第65回日本学生科学賞山口県代表として推薦したことが書かれています。
この論文を書いた中学生たちや次に続く世代に貴重な地域の宝を残すためにも、最新の知見や希少野生動植物の保護に関する国の方針に則り、アブサンショウウオの生息に不可欠な湿原が保全されるよう必要な施策を実施していただくようお願いいたします。
前述の京都大学研究チームの論文によれば(仮称)阿武風力発電事業が計画されている地域はアブサンショウウオの生息地内に含まれています(注3)。本年1月に事業予定地内2カ所で住民が
アブサンショウウオと思われるサンショウウオを見つけています(注4)。京都大学研究チームの研究者に写真による同定を依頼したところ、「見た目はアブサンショウウオに見え、かつ阿武町で採集されているのなら、ほぼアブサンショウウオで間違いないと思う」という回答を得ています。
現在、(仮称)阿武風力発電事業は環境影響評価方法書を終え、環境影響調査が行われています。方法書には具体的な工事計画が書かれていませんでした。同事業により森林伐採、湿地開発、林道などの建設による森の乾燥化、工事により発生する濁水や土砂の流出、工事用道路による分断が予測され、事業予定地内に生息するアブサンショウウオはじめ他の希少野生動植物にも悪影響が出ることを私たちは懸念しています。また、県自然記念物のミヤマウメモドキは指定地以外にも分布しており、影響が懸念されます。
県知事におかれましては、生物多様性基本法第3条の基本原則(添付資料4)に則り、同事業による希少野生動植物への影響が回避されるよう、今後とも慎重な判断に基づき適切な指導を下されますようお願いいたします。 
(注1)
Systematics of the Widely Distributed Japanese Clouded Salamander, Hynobius
nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and Its Closest Relatives
Masafumi Matsui, Hiroshi Okawa, Kanto Nishikawa, Gen Aoki, Koshiro Eto, Natsuhiko Yoshikawa, Shingo Tanabe, Yasuchika Misawa, Atsushi Tominaga. Current Herpetology 38(1):32-90,February 2019
(注2)
(注3)
同上京都大学研究チームによる論文:figure15
(注4)
アブサンショウウオ写真:撮影日2022年1月7日
【添付資料】
1)朝日新聞2019年4月24日記事「サンショウウオ、新種だった 遺伝子解析」
2)アブサンショウウオ写真:撮影日2022年1月7日
3)「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する 政令の概要」
令和3年度希少野生動植物種専門家科学委員会 (資料1-3)令和3年度国内希少野生動植物種新規指定候補種の概要:両生類アブサンショウウオ
4)生物多様性基本法第3条基本原則
以上

アブサンショウウオ

風力発電大丈夫???NO3を折り込み配布しました

4月1日、当会の意見広告「風力発電大丈夫???NO3」を阿武町内に新聞折込で配布しました。画像が読みにくくすみません。ご希望のかたにはお送りしますのでDMでご連絡ください。
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2月に配布した「風力発電、大丈夫??NO2」に掲載した風力発電の問題点について、住民の方から早速質問を頂きました。(仮称)阿武風力発電事業が持続可能な循環型社会に貢献するかどうか、町づくりの方針に則ったものかどうか、自分たちが暮らす地域のこれからのことを自分のこととして考えるために十分な情報が与えられているでしょうか。
 
事業者と土地の契約を結ぶと地権者には地代が入ります。これまでお金にならなかった山がお金になるので、山の管理や地域の今後に危機感を持っていらっしゃる方々にとってはありがたいかもしれませんが、ちょっと待ってください。契約書の内容は十分理解されていますか。この契約には大きなリスクが伴うことを、事業者はきちんと説明してきたでしょうか。鳥取県秋田県をはじめ全国各地の風力発電事業予定地で、地権者に不利な地上権設定契約が問題となっています。
 
【地上権設定契約書について】
風力発電事業の場合、地上権設定契約は20年から35年と長期にわたり、その間契約の解除はできません。地上権は借地権のひとつで、地上権者は地権者の承諾なしに、自由に地上権を移転・処分することができ、その土地の活用について所有権並みの強い権利が得られます。
事業が行き詰っても投資家は保護されるという「倒産隔離」条項が契約に入っていると、台風で風車が折れるなど修繕費がかさみ採算が合わなくなっても、事業者は自社の資本金だけ清算し、あとの決定に関して地権者は一切文句が言えません。最悪の場合、風車の撤去費用も含めて地権者にかぶさってきます。
 (図省略)  
 
【納税義務が生じます】
風車が建設されると地目が「山林」から「雑種地」に変更され、地権者には固定資産税の納税義務が生じ、原状復帰するまで固定資産税を払い続ける義務が生じます。原状復帰とは山林の状態に戻すことで、コンクリートの基礎が残ったままでは山林に戻ったとはみなされません(阿武町役場に確認済み)。住民説明会において、HSE社は20年後に撤去となった場合、コンクリート基礎まで引っこ抜いたら地力が弱まり災害が起きる可能性もあるので土台はそのまま残る可能性もあると説明しました。そうなると原状復帰とはみなされず子や孫の代まで納税義務を負うことになります。
【風車の破損や倒壊、土砂崩れ等が起きた場合は・・】
風車が破損、倒壊等により、機能しなくなった場合、ただの鉄の構造物と見なされ、基礎自治体による建築基準法の枠の中で、勧告や撤去対応が求められます。事故が起これば債務超過になるリスクがあり、地権者や地域が大きな負債を負うことになりかねません。最悪の場合、原状回復が地権者の責任になっている場合もあります。昨年の熱海市の土石流災害はその後どうなっています
か。人災として責任の所在や因果関係を問う裁判が長く続くかもしれません。
 風車一基あたりの原状復帰費用は約3億円ともいわれています。3億×13基=39億円、地上権設定契約では地権者が負うことになります。地権者が高齢者であれば、子や孫に借金がいく場合もあります。
 
 (仮称)阿武風力発電事業予定地のような中山間地では地盤がゆるく、土砂災害、台風、落雷など事故の起こる確率が高く―稼働後20年間事業がトラブルなしに進む保証はどこにもありません。
 事業予定地には広大な町有林も含まれます。町は2020年10月14日に奈古で開催された住民説明会の前日13日、事業者に賃貸証明書を提出しています。「これは事務的書類であって本書類により賃貸義務を負うものではない」と町長は昨年12月町議会で説明しましたが、最終的に地権者として町の判断が求められます。
 
これからの阿武町を支える子どもたちの世代に大きな負債を負わせることがないように、また町づくりに禍根を残すことがないように、町には懸念される土砂災害や環境破壊、健康被害の問題の
ほかに、契約のリスクや稼働終了後の風車の撤去処理についてもしっかり確認し最終判断を慎重にして頂きたいと思います。
 
風力発電の問題点≫
1)土砂災害の危険性―急峻な山地の尾根に幅広い作業道を建設、森林伐採、残土処理は?
2)住民が長年なじんできた里山の景観が一変
3)阿武町の豊かな生態系を破壊―県自然記念物ミヤマウメモドキ絶滅危惧種ツキノワグマアブサンショウウオや希少なオヒキコウモリクマタカ等が生息。 
4)地権者に不利な地上権が設定された賃貸契約が結ばれる場合が多い。
5)騒音や低周波音、超低周波音による健康被害
6)事業終了後の風力発電設備の処理が不明確。
7)地球規模で―希少鉱物資源開発に伴い第三世界先住民族の人権を侵害
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写真の説明はありません。
 
 
 
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(仮称)阿武風力発電事業の中止を求めます!ーオンライン署名をスタートしました

chng.it

長門国定公園が一望できる阿武町内の山の尾根筋に高さ約150mの巨大風車を13基も建てるという(仮称)阿武風力発電事業計画が進行中です。

巨大風車から発生する超低周波が人体に悪影響を及ぼさないという科学的な安全性が立証されていません。事業者であるHSE株式会社は「8.5km圏内は、住民の合意形成が必須の地域である」と住民説明会にて明言しました。

・風車から2km圏内には540戸(わずか500m圏内にも3戸)あり、現に住民が暮らしています。多くは高齢者です。これは人道に反する事業計画です。
・町内の床波山から白須山に続く尾根筋(延長6㎞)への巨大風車の建造は山の水源涵養機能を損ない、建設予定地っ雄編地域に土砂災害を及ぼす危険があります。下流域や海への土砂流入により豊かな漁場が失われると懸念します。
・建設予定地と周辺の広範囲な豊かな自然生態系が壊される懸念があります。
・世界中で風車建設による風車騒音、低周波音、超低周波音による健康被害の発生が報告されています。

このような問題点が懸念される(仮称)阿武風力発電事業計画の中止を求めます。

【阿武町長様、萩市長様】
山口県の北部、北浦が誇るジオパークと北長門国定公園を育む森林とその恵みを受ける河川、そして美しい海を破壊することなく後世に残すため、また過疎地で頑張る農林水産業者とそこに生活する人々を苦しめない為にも、当事業計画関係自治体の首長として、地権者として阿武風力発電事業に同意しないでください。

山口県知事様】
山口県には優れた景観条例があります。県北の景勝地である北長門国定公園および一連の山・川・海を守り、後世に残すために今こそ条例を活用してください。また、事業実施想定区域内とその周辺には絶滅危惧種に指定されている動植物が生息しています。県北の自然遺産を後世に残すためにも、阿武風力発電事業に係る許認可を事業主に与えないでください。

経済産業大臣様】
事業主がクリアしなければならない必須条件である風力発電事業予定地から8.5km圏内住民の合意形成が不十分、かつ広範な近隣市民からも信任が得られない状況を深く考慮され、HSE株式会社に事業の許認可を与えないでください。

【HSE株式会社様】
事業の許認可を得るための必須条件である8.5km圏内住民の合意形成が不十分です。また広範な近隣市民からも信任が得られない状況を深く考慮され、当事業計画からの撤退を求めます。

署名呼びかけ団体:
阿武風力発電所建設を考える会
阿武風力発電所ちゃあなんか考える会
阿武・萩の未来を良くする会

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キャンペーン · (仮称)阿武風力発電事業の中止を求めます! · Change.org

「(仮称)阿武風力発電事業についての質問と要望(再質問・再要望)」を県に提出

 8月10日に県に対して「(仮称)阿武風力発電事業についての質問と要望(再質問・再要望)」を提出、文書回答とともに協議の場を設けていただくようお願いしました。
この再質問と再要望は6月24日、7月13日に県に提出した質問状への件からの回答(7月30日)に対するものです。

以下、(仮称)阿武風力発電事業についての質問と要望(再質問・再要望)。
1) 土砂災害発生の危険性 と濁水処理について
 6月24日、そして7月13日の質問に対して、知事は環境影響評価法において事業者等に対し環境の保全の見地からの意見を述べるものであり、知事意見において風力発電計画の中止を求めることはできないと回答されていますが、県民の命と暮らしを守り、公益を保障することは知事の本分だと思います。
 村岡知事は同事業配慮書に対する知事意見(2020年9月8日)において、「風力発電設備の配置等、並びに取付け道路、送電線ルート等を含めた具体的な計画を明らかにした上で(中略)調査、予測、及び評価を実施すること」、また「区域内には崩壊土砂流出危険区域が含まれることから、区域内での土砂流出状況の精査し、本事業による水源涵養保安林等への影響を回避、または十分に低減するとともに、近年多発している豪雨災害等をはじめとした自然災害への対策について検討し、その結果を計画に反映すること」を求めました。しかし、事業者は今後の調査結果によりサイトや作業道、沈砂池の具体的な検討を進めるとし、方法書では大まかな造成図面さえも示していません。知事が配慮書で求めているように、本来なら環境影響評価方法書の場で災害を回避する具体的な対策が示されたうえで論議され、そのやりとりが公開されるはずですが、事業者は方法書において示すべき対策を提供しない状況のままです。
 林地開発許可の事務処理は阿武町に権限移譲されているので、県は審査に関与できないと森林整備課は回答されました。それでは、万が一にも土砂災害等が発生し住民の生命、財産が脅かされる場合、県には責任と補償措置はないのでしょうか、阿武町にのみ責任と補償が帰されるのでしょうか。
 既存の林道基準3mを越える幅広い道路の尾根筋への新設による斜面の浸食の危険性、流出土砂の堆積、濁水の発生など、私たちが指摘した土砂災害発生の危険性に対して、県の土木関係、林業関係の各部署がどのように具体的な対応をされるのか、お示しください。各部署が法令順守で対応すれば大丈夫なのでしょうか、それでは不十分な可能性は考えられませんか。部署ごとの判断を越えて、総合的にどこが判断するのですか。
2) 超低周波音による健康被害について
 超低周波音による健康被害について県の見解は、「風力発電施設から発生する騒音が人の健康に直接的に影響を及ぼす可能性は低く、また、超低周波音・低周波音と健康影響の関連を明確に示す知見は確認できない」という環境省指針(平成29年5月)によると回答されましたが、この指針は風力発電と健康影響の関連を確認できないというもので、健康影響がないと断定しているわけではありません。前回提出した秋田県内の聞き取り調査でも報告されているように、健康被害は実際に各地で報告されています。
 前回、大型風力発電施設による健康被害者を地域から出してもよいのかとお尋ねしました。稼働後に健康被害を訴える住民が出た場合、県は具体的にどのような対応をお考えでしょうか。

3)景観について
 県の景観条例の基本理念に基づくなら、阿武町の景観は風車(工作物)を毎日見る住民やここを訪れる観光客のものです。事業者によるフォトモンタージュ予測についてのアンケートを住民に実施してください。

4)自然環境、生態系への影響
 事業者は、方法書ではミヤマウメモドキの群生地を事業予定地域から除外しましたが、事業区域内にも群生は確認されているという地元の声もあります。特にミヤマウメモドキアブサンショウウオなど絶滅危惧種については、群生や生息に不可欠な湿原が維持されるよう、より詳細な現地調査を行い報告してください。

5)7月3日の静岡県熱海市の土石流災害に関連して
 熱海市の土砂災害については、現在、国土交通省静岡県熱海市において、原因の分析と対策が講じられております。また多くの識者が、それぞれの立場から現地調査と原因究明と対策を講じていると承知しております。その中で上流の林地の乱開発が構造的な問題として指摘されています。これは、最近全国で多発する森林部からの土砂流失と災害を、単に異常気象と豪雨のためとするだけでなく、人為的な過開発、森林保全のありかたに起因するのではないかという見解です。そこで、いただいた回答に即してお尋ねします。
5-1)
 森林行政に責任をもつ県として、静岡県熱海市の土砂災害をどのように分析・認識されていますか。視察などの予定や山口県内の同様条件について点検指示などを発出する計画はありませんか。
5-2)
 風力発電計画が作業道路や尾根の斜面を切り崩す大規模工事を伴うため、土砂流失の危険性を加速させること、これでは、保安林の意味をなさなくなるのではないか、そのような危惧から、「保安林制度の法と精神に則って計画の中止を勧告すべき」と要望しました。それに対しては「お示しの勧告に係る規定はありません。」という回答でした。保安林制度の成立時には、風力発電は存在しないし、想定もされていなでしょうから、明文化されている規定が存在しないことは、十分理解できます。しかし、明らかに地形変更を含む開発にたいして、保安林制度の「精神」からして沈黙、拱手傍観でいいのでしょうか。改めてお尋ねしますが、他にどんな方法があるのか、ご教示いただければ幸いです。
なお、県議会でも取り上げられましたが、環境影響評価技術審査会の議事が公開の方向ですすめられている点はおおいに評価したいと思います。発言者氏名の公表も含め、より積極的な開示を求めます。
以上。
 

土砂災害の懸念

事業予定地の町有林には間伐推進団地とされている地域があります。八幡原から白須山に及ぶ約365haの広大な地域です。間伐作業のための林道は前日の雨で中央がえぐれていました(7月16日撮影)。県道303号線の路上にころがる石や土砂もずいぶんあり荒れていました。

この白須山の尾根に巨大な風車が8基並ぶ計画が進められています(このほか床波山方面に5基)。建設のために尾根を切る形で広い作業道路が作られれば、豪雨災害による濁水や土砂は行き場を失い、県道や白須川に流れ込むのではないかと私たちは懸念しています。

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「打てば響く」はずですが

 6月10日に花田町長宛に「(仮称)阿武風力発電事業に対する要望と質問」を当会を含む地元三団体が提出、6月25日付で回答がありました。残念ながら、町長からの回答には方法書に対する町長意見が添付されていましたが、私たちからこの事業に対する町の姿勢を問う具体的な7項目の質問には一切回答されていませんでした。町長のモットーは「打てば響く」だったはずですが。。
★3団体からの質問概要
質問1 
林地開発許可においては「土砂の流出又は崩壊、その他の災害を発生させるおそれがあること」に該当しないと認める場合は、許可しなければならないこととされています。これだけの懸念がある事業を、町は安全だと判断されるのですか。
質問2
この風力発電事業が持続可能な循環型社会に貢献するかどうか、町づくりの方針に則ったものかどうか、この事業について住民に十分な情報が与えられ、町や町議会、また住民の間で十分な論議が尽くされているとお考えでしょうか。
質問3
4月23日の住民説明会後の新聞取材に答えて、町長は「(CO2削減量が3万9千トン以上にあたる効果)の数字を聞けば相当大きなもの。大きなデメリットがなければ、基本的には協力していく立場」(4月25日山口新聞)という見解を示されましたが、大きなデメリットとは具体的に何を指しているのでしょうか。この事業のメリット、デメリットをどのようにお考えでしょうか、町民にとってどんなメリットがあるとお考えでしょうか。
事業のメリット、デメリットを具体的に挙げて町民に示してください。
質問4 
阿武町町有林野条例第21条によれば、町有林を民間の事業に貸し出すことはできないはずですが、事業予定地内に町有林を有する地権者であり、国有林を除く民有林の林地開発許可の許認可を出す立場で大きな権限を有する町には厳正で公正な判断が求められます。事業者への協力とは、どのようなかたちの協力を想定されているのでしょうか。
質問5 
風力発電施設による健康被害者を地域で一人でも出してよいとお考えでしょうか。
質問6 
国が進める再生可能エネルギーの推進のために、阿武町の宝とも言うべき景観を犠牲にしてもよいとお考えでしょうか。
質問7
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標の一つに「森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」とあります。町長はこの事業について、地球温暖化防止に貢献し、再生可能エネルギーを推進し開発することは望ましいと見解を述べてこられましたが、稼働期間20年にすぎない一民間企業による「地球温暖化防止のための事業」の代償として、長い年月をかけて育まれてきた豊かな生態系を破壊し環境を悪化させてもよいとお考えでしょうか。
質問は以上です。

************************************
★町長回答はここから~
(仮 称)阿 武風力発電事業 については、環境影響評価法及び電気事業法 に基づ き、これまで、事業主である日立サステナブルエナジー株式会社 (以下「事業者」という。)から令和 2年 7月 からの計画段階配慮書の縦覧、同年 10月 には風力発電事業計画に関する住民説明会、令和 3年 1月 からの環境影響評価方法書 (以下「方法書」という。)の 縦覧、同年 4月 には方法書 に関する住民説明会が開催されてきました。
その縦覧における意見書や説明会 において、本事業 に対しては、自然、環境、健康 に与える影響を懸念される方々からの反対意見が ある一方で、地元地域の維持発展の好機と捉える方々からの賛成意見がある ことなど、様 々な立場の方々の様々な意見があります。
現在、方法書の手続きにおいて、環境影響評価法第 10条 第 2項の規定 に基づき、山口県知事から方法書 に対す る町長意見 を求められ、住 民の皆様等のご意見をお聞きした上で、「全般的事項」と「騒音及び低周波音」、「水環境」、「景観」、「動物及び生態系」、「自然災害」、「工事」等 の12の 個別項 目により環境配慮 について、 「別添 1」 のとおり山 口県知事へ提 出したところで あり、今後、山口県知事の意見書に市町長意見が反映 され、最終的 に県知事意見も参考 にしての経済産業大臣意見が事業者に通知される予定となって います。
 また、風力発電事業 の許認可については、経済産業省が管轄で、その認可事項の中に環境 アセスメントをクリア していることが要件とな っており、環境アセスメントにつ いて は、環境影響評価法、その他開発に関わる関係法令や最新のデー タを用いた判断基準や指針 に基づ いて、それぞれ審査、また認可され、その上で、健康や環境等の影響 にあたえるものでなけれ ば、風力発電事業 について は、 この地域の恵まれた風況 を活用するものであり、地球温暖化防止に貢献する発電技術 として期待され、地球環境の保全 を図 っていく上で、再生可能エネルギー を推進することは望ましいことであると考えます。
 しかし、現段階で示された風力発電機 の設置位置もまだ最終確定ではなく、方法書の手続きが終わり次第、実際に環境影響評価の各項目についての現地調査が開始され、予測及び評価がされることとなります。
 今後 、その現地調査を受けて、次の環境アセスメントである環境影響評価 準備書の中で事業者から説明されることと思いますので、事業者にはより具体的かつ丁寧な説明を求めるとともに、町としても、その説明を受け判断したいと思いますので、ご理解のほどよろしくお願いします。
以上。

(仮称)阿武風力発電事業についての要望と質問ー阿武町長花田憲彦様

(仮称)阿武風力発電事業についての要望と質問


日頃の町民のためのお働きに感謝いたします。

 さて、私たちはこれまで日立サステナブルエナジー株式会社による(仮称)阿武風力発電事業の問題点について町が独自に調査することと、万が一健康被害や土砂災害が起きた場合の責任の所在を明らかにするように求めてきましたが、明確な回答はいただけませんでした。ただ、環境アセスメントのそれぞれの段階で私たちが要望したことについて事業者に納得のいく説明を求めていくと回答されましたので、今回改めて下記の要望と質問を提出いたします。
 6月25日までに文書によるご回答を何卒よろしくお願いいたします。なお、この質問に対するご回答につきましては、その有無も含めて公開させていただきます。

  

                 記

 阿武町は(仮称)阿武風力発電事業に協力しないでください。

 阿武町は「選ばれる町をつくる」を基本理念とし、町づくりの方向性を「持続可能な循環型社会」の構築とする第7次総合計画を策定しています。施策として未利用森林資源を活用してバイオマスエネルギーや薪などの再生可能エネルギーの普及推進が掲げられています。(仮称)阿武風力発電事業は民間の事業者によるものとはいえ、町づくりの指針ともいうべき総合計画にも係る問題であり、建設されれば住民の暮らしや健康に大きな影響をあたえます。総合計画の冒頭には「豊かな、美しい自然を誇りに思い、残したい。住み続けたい。いつかは帰ってきたい。」という私たち町民の共通する思いも記されています。
 私たちが懸念している以下の環境悪化が顕在化し、賠償が必要になるような事態になった場合、阿武町には事業予定地内に町有林を有する地権者として、また国有林を除く民有林の林地開発許可の許認可を出す立場で大きな責任が生じることはいうまでもありません。

 

A)土砂災害発生の危険性と濁水処理について

 近年、大量の降雨による土砂災害が各地で多発しており、記憶に新しいところでは2013年7月28日の集中豪雨(須佐観測所では1時間雨量185ミリを観測)、また2018年の西日本豪雨災害も思い起こされます。この時、斜面崩壊や土石流が発生していたのは花崗岩地域、流紋岩地域でした。事業予定地の土質も土砂崩れを起こしやすい花崗岩流紋岩など火山岩地であり、事業予定区域が真砂土で崩れやすいことは地元住民なら知っています。

 今回の事業予定地は県道114号、葛篭集落方面、県道303号線に向け急斜面になってい

ます。葛篭集落には傾斜度が30度を越える急傾斜地の崩壊特別警戒区域、土石流特別警戒区域、土石流危険渓流、急傾斜地崩壊危険箇所が町のハザードマップに指定されています。想定を越える量の雨水がこの急斜面に降れば、雨水により浸食された土砂を含んだ濁水が事業予定地から谷へ、河川へ、集落へ、さらには海へと流れ込むことが予想されます。白須山から3km下れば、阿武町が誇る豊かな漁場です。配慮書段階で、県知事は当該区域内に崩壊土砂流出危険区域が含まれることから区域内の土砂流出状況を精査し、豪雨災害をはじめとした自然災害への対策について検討し計画に反映させることと意見しています。また萩市長も郷川、白須川、大井川上流域に予定地が位置することから間接的な土砂流入による漁場や景観などへの影響を懸念しています。実際に下関市の白滝山ウィンドファーム下の粟野川ではアユ、青のりの漁獲量が減ってきたことが報告されています。

 事業者は上述の危険区域は除外し、土砂や濁水の流出を抑制するために仮設沈砂池を設置するなど工事中(約3年間)は対策を適切に行うとしていますが、工事終了後(稼働期間20年間)の土砂や濁水の流出については対策を明記していませんし、環境影響評価の選定項目からも除外しています。稜線部に幅広い作業道路が造成され、切土、盛土部分も含め裸地の部分がそのままの状態で置かれるなら、工事終了後の排水施設も必要だと思われます。裸地は浸透能力が低く地表流の発生につながり、河川流量の増大、土壌侵食、土砂流出を招きます。本事業と同様な地形からなる島根県のウィンドファーム浜田では河川への土砂流出や土石流などの土砂災害が発生しています。

 また、建設予定地の白須山は、砂防ダムが建設されている対岸の山腹崩壊地域と同じように急峻な斜面であり、砂防施設もいくつか設置されています。事業者は風車を建設するために山の尾根付近に一基当たり3000㎡の土地が必要だと説明会で回答されましたが、白須山の稜線が広範囲に掘削され裸地が広がれば土砂災害の危険性が増すことは素人目にも明らかです。白須山ふもとのたたら製鉄遺跡は埋め戻されていますが、萩ジオパークジオサイトとなるには十分な文化資産ですし、阿武町にとっても貴重な文化遺産です。ここを土石流が襲って台無しになる可能性も懸念されます。

質問1 

林地開発許可においては「土砂の流出又は崩壊、その他の災害を発生させるおそれがあること」に該当しないと認める場合は、許可しなければならないこととされています。これだけの懸念がある事業を、町は安全だと判断されるのですか。

質問2 

この風力発電事業が持続可能な循環型社会に貢献するかどうか、町づくりの方針に則

ったものかどうか、この事業について住民に十分な情報が与えられ、町や町議会、ま

た住民の間で十分な論議が尽くされているとお考えでしょうか。

質問3 

4月23日の住民説明会後の新聞取材に答えて、町長は「(CO2削減量が3万9千トン

以上にあたる効果)の数字を聞けば相当大きなもの。大きなデメリットがなければ、

基本的には協力していく立場」(4月25日山口新聞)という見解を示されましたが、

大きなデメリットとは具体的に何を指しているのでしょうか。この事業のメリット、

デメリットをどのようにお考えでしょうか、町民にとってどんなメリットがあるとお

考えでしょうか。事業のメリット、デメリットを具体的に挙げて町民に示してください。


質問4 

阿武町町有林野条例第21条によれば、町有林を民間の事業に貸し出すことはできな

いはずですが、事業予定地内に町有林を有する地権者であり、国有林を除く民有林の

林地開発許可の許認可を出す立場で大きな権限を有する町には厳正で公正な判断が求

められます。事業者への協力とは、どのようなかたちの協力を想定されているのでし

ょうか。

 

B) 健康被害について

今回計画されている風車は4200kw と国内最大規模で国内の稼働実績もありません。風車による超低周波が私たち住民の健康や暮らしに影響が出る懸念が払しょくできません。低周波音、超低周波音による影響を受けるかどうかは個人差が大きいといわれますが、 私たちの中にも風力発電施設の見学に行き気分が悪くなったメンバーがいます、これは事実です。

事業者は「住民からの苦情などが出た場合には弊社が状況を調査し、本事業によるものであった場合には補償などの対応をします」と答えていますが、過去の幾多の公害裁判において因果関係の立証が困難なことは知るところです。被害を出した側が状況調査を行い因果関係があるかどうかを判断するのでは公正さに欠けています。

環境省は「風力発電施設から発生する超低周波音・低周波音と健康影響について、現段階において明らかな関連を示す知見は確認できない」、「基準値ではなく参照値である。『参照値』を風車の低周波音に適用することはできない 」としていますが影響がないと断定しているわけではありません。

ところが、事業者は説明会で超低周波による人体への健康被害は「ない」と断定しました。これは誠実な科学的態度とはいえません。

1992年に採択された「環境と開発に関するリオ宣言」には、因果関係が科学的に明らかになっていない場合、開発行為は控えるという予防原則が定められ、国際法の一般原則の一つとなっています。予防原則に則れば、住戸からこれほど近い場所に、また5㎞以内に学校や行政、福祉施設が存在するような場所に風力発電施設を建設することは問題外です。


質問5 風力発電施設による健康被害者を地域で一人でも出してよいとお考えでしょうか。

 

  • 景観について

山口県景観条令では景観は地域の自然、歴史、文化など人々の生活、経済活動などとの調和により形成されるとして良好な景観の重要性が基本理念として示されています。第7項には「良好な景観の形成は、景観が、それを構成すべき個々の土地、建築物その他の工作物または物件の外観のみならず、それを見る者の認識によって成り立つものであることを旨として、行わなければならない」とあります。良好な景観は風車(工作物)を毎日見るわたしたち住民やここを訪れる観光客の認識によって成り立つものです。事業者は景観への影響予測を主要な眺望点からの眺めや圧迫感の有無に限定していますが、県の景観条例の基本理念に基づくなら、それでは不十分だと考えます。

阿武町全域が萩ジオパークに含まれ、海岸部が北長門海岸国定公園に指定されていることは町長はじめ多くの方々が指摘されているとおりです。また、第7次阿武町総合計画には「豊かな、美しい自然を誇りに思い、残したい」という町民の共通する思いも冒頭に記されています。私たちは山々の風景を眺めて安心感を得、季節によって表情を変える木々の彩りに日々癒されます。海岸部(奈古、宇田)と山間部(福賀)を結ぶ山稜の尾根筋への大型風車建設は景観を損なうもので、町民の故郷への思いを踏みにじる行為です。


質問6 

国が進める再生可能エネルギーの推進のために、阿武町の宝とも言うべき景観を犠牲

にしてもよいとお考えでしょうか。
 

4)自然環境、生態系への影響

 私たちが次の世代に残すべきは目に見える風景だけではありません。事業予定地内とその周辺には豊かな生態系があります。森の豊かさは、多くの小動物、鳥たちによって循環が媒介され蓄積されてきたものです。長い年月をかけてきて培われてきた豊かな生態系が、20年で事業を終える風力発電施設の建設のために失われる可能性があります。例えば、ミヤマウメモドキの群生地は事業予定地域から除外されましたが、生態系を維持するためには十分ではありません。群生地がある八幡原に上流域での山林開発によって濁水が流れ込めば湿原の環境が大きく変わり失われてゆく可能性さえあります。

 環境省レッドリスト2020に掲載されているアブサンショウウオ(絶滅危惧1類)、オヒキコウモリ(絶滅危惧II類)、山口県自然記念物で日本の南限として自生しているミヤマウメモドキだけではありません。他で見ることのできなくなった貴重な山野草の数々、モリアオガエル、モズクガニ、アサギマダラ、ソウシチョウ、ミサゴ、カンアオイギフチョウなど、ここに生息する貴重な動植物を私たちの時代で失うわけにはいきません。

 

質問7 

国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標の一つに「森林の持続可能な管理、砂漠化

への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」とあ

ります。町長はこの事業について、地球温暖化防止に貢献し、再生可能エネルギー

推進し開発することは望ましいと見解を述べてこられましたが、稼働期間20年にす

ぎない一民間企業による「地球温暖化防止のための事業」の代償として、長い年月を

かけて育まれてきた豊かな生態系を破壊し環境を悪化させてもよいとお考えでしょう

か。


以上、 何卒よろしくお願いいたします。