「(仮称)阿武風力発電事業についての質問と要望(再質問・再要望)」を県に提出

 8月10日に県に対して「(仮称)阿武風力発電事業についての質問と要望(再質問・再要望)」を提出、文書回答とともに協議の場を設けていただくようお願いしました。
この再質問と再要望は6月24日、7月13日に県に提出した質問状への件からの回答(7月30日)に対するものです。

以下、(仮称)阿武風力発電事業についての質問と要望(再質問・再要望)。
1) 土砂災害発生の危険性 と濁水処理について
 6月24日、そして7月13日の質問に対して、知事は環境影響評価法において事業者等に対し環境の保全の見地からの意見を述べるものであり、知事意見において風力発電計画の中止を求めることはできないと回答されていますが、県民の命と暮らしを守り、公益を保障することは知事の本分だと思います。
 村岡知事は同事業配慮書に対する知事意見(2020年9月8日)において、「風力発電設備の配置等、並びに取付け道路、送電線ルート等を含めた具体的な計画を明らかにした上で(中略)調査、予測、及び評価を実施すること」、また「区域内には崩壊土砂流出危険区域が含まれることから、区域内での土砂流出状況の精査し、本事業による水源涵養保安林等への影響を回避、または十分に低減するとともに、近年多発している豪雨災害等をはじめとした自然災害への対策について検討し、その結果を計画に反映すること」を求めました。しかし、事業者は今後の調査結果によりサイトや作業道、沈砂池の具体的な検討を進めるとし、方法書では大まかな造成図面さえも示していません。知事が配慮書で求めているように、本来なら環境影響評価方法書の場で災害を回避する具体的な対策が示されたうえで論議され、そのやりとりが公開されるはずですが、事業者は方法書において示すべき対策を提供しない状況のままです。
 林地開発許可の事務処理は阿武町に権限移譲されているので、県は審査に関与できないと森林整備課は回答されました。それでは、万が一にも土砂災害等が発生し住民の生命、財産が脅かされる場合、県には責任と補償措置はないのでしょうか、阿武町にのみ責任と補償が帰されるのでしょうか。
 既存の林道基準3mを越える幅広い道路の尾根筋への新設による斜面の浸食の危険性、流出土砂の堆積、濁水の発生など、私たちが指摘した土砂災害発生の危険性に対して、県の土木関係、林業関係の各部署がどのように具体的な対応をされるのか、お示しください。各部署が法令順守で対応すれば大丈夫なのでしょうか、それでは不十分な可能性は考えられませんか。部署ごとの判断を越えて、総合的にどこが判断するのですか。
2) 超低周波音による健康被害について
 超低周波音による健康被害について県の見解は、「風力発電施設から発生する騒音が人の健康に直接的に影響を及ぼす可能性は低く、また、超低周波音・低周波音と健康影響の関連を明確に示す知見は確認できない」という環境省指針(平成29年5月)によると回答されましたが、この指針は風力発電と健康影響の関連を確認できないというもので、健康影響がないと断定しているわけではありません。前回提出した秋田県内の聞き取り調査でも報告されているように、健康被害は実際に各地で報告されています。
 前回、大型風力発電施設による健康被害者を地域から出してもよいのかとお尋ねしました。稼働後に健康被害を訴える住民が出た場合、県は具体的にどのような対応をお考えでしょうか。

3)景観について
 県の景観条例の基本理念に基づくなら、阿武町の景観は風車(工作物)を毎日見る住民やここを訪れる観光客のものです。事業者によるフォトモンタージュ予測についてのアンケートを住民に実施してください。

4)自然環境、生態系への影響
 事業者は、方法書ではミヤマウメモドキの群生地を事業予定地域から除外しましたが、事業区域内にも群生は確認されているという地元の声もあります。特にミヤマウメモドキアブサンショウウオなど絶滅危惧種については、群生や生息に不可欠な湿原が維持されるよう、より詳細な現地調査を行い報告してください。

5)7月3日の静岡県熱海市の土石流災害に関連して
 熱海市の土砂災害については、現在、国土交通省静岡県熱海市において、原因の分析と対策が講じられております。また多くの識者が、それぞれの立場から現地調査と原因究明と対策を講じていると承知しております。その中で上流の林地の乱開発が構造的な問題として指摘されています。これは、最近全国で多発する森林部からの土砂流失と災害を、単に異常気象と豪雨のためとするだけでなく、人為的な過開発、森林保全のありかたに起因するのではないかという見解です。そこで、いただいた回答に即してお尋ねします。
5-1)
 森林行政に責任をもつ県として、静岡県熱海市の土砂災害をどのように分析・認識されていますか。視察などの予定や山口県内の同様条件について点検指示などを発出する計画はありませんか。
5-2)
 風力発電計画が作業道路や尾根の斜面を切り崩す大規模工事を伴うため、土砂流失の危険性を加速させること、これでは、保安林の意味をなさなくなるのではないか、そのような危惧から、「保安林制度の法と精神に則って計画の中止を勧告すべき」と要望しました。それに対しては「お示しの勧告に係る規定はありません。」という回答でした。保安林制度の成立時には、風力発電は存在しないし、想定もされていなでしょうから、明文化されている規定が存在しないことは、十分理解できます。しかし、明らかに地形変更を含む開発にたいして、保安林制度の「精神」からして沈黙、拱手傍観でいいのでしょうか。改めてお尋ねしますが、他にどんな方法があるのか、ご教示いただければ幸いです。
なお、県議会でも取り上げられましたが、環境影響評価技術審査会の議事が公開の方向ですすめられている点はおおいに評価したいと思います。発言者氏名の公表も含め、より積極的な開示を求めます。
以上。