HSE株式会社に質問状を送付

(仮称)阿武風力発電事業の事業者であるHSE株式会社に、地元三団体から以下の2点について質問状を送りました。
A)事業予定地の賃貸証明書について
賃貸証明書にある町有林の貸与について、町長は町議会で一筆を分割して一部を貸与するものだと二度にわたり答弁しているが、事業者の見解はどうなのか。
B)アブサンショウウオの保護、湿原の保全について
 絶滅危惧種であるアブサンショウウオの生息地内に事業予定地が含まれているが、現在行われている環境影響評価の現地調査の項目にアブサンショウウオは含まれているかなど、アブサンショウウオなど希少動植物の保護について事業者の姿勢を尋ねました。
以下、質問状~(長いです・・)

公開質問状
 A)事業予定地の賃貸証明書について
 B)アブサンショウウオの保護、湿原の保全について
 現在、御社が阿武町にて計画をすすめている(仮称)阿武風力発電事業に対し、私たち住民は大きな不安を抱えています。昨年4月に貴社の事業計画に対し公開質問状を提出し回答を頂きました。その後、新たに確認しておきたい点が出てきましたので、再度公開質問状を提出いたします。
それぞれの質問について、文書にてご回答いただくようお願いいたします。ご回答は2022年10月15日までにいただければ幸いです。なお、この質問に対するご回答につきましては、その有無も含めて公開させていただきます。
A)事業予定地の賃貸証明書について
 2020年10月13日に阿武町が御社に提出した賃貸証明書に記載されている町有林貸付について、花田町長は町議会一般質問答弁において、二度にわたって町有林を分割して貸す旨の発言をしました(2021年9月定例議会、2022年6月定例議会)。
 2021年9月9日の阿武町議会定例会一般質問において、清水元町議が賃貸証明書記載されている町有林の面積が実際とは28万㎡も異なると指摘、それに対し花田町長は以下のように答弁しました。
「町長:
面積についてでありますが、これはプロットするところの地積であって、実際にこれが契約ということになると、この内のどの部分という契約になると思いますから、これがまさか何万㎡とかの契約をするはずもありませんし、ご承知のように町有林は1筆が大変大きな筆でありますし、小さいもの、あるいは民地から町有地に変わった所もあります。この何万㎡というものに例えば機械を設置するということはあり得ません。まずは柱の位置はもちろんでありますが、その周辺のいわゆるその肩の部分、あるいはそれに関連する 道路、そういったものが契約の対象となると思っておりますから、そこら辺は勘違いでしょうか、この筆全体で契約するなんてことは当然あり得ませんし、 そこは思い違いかなというふうに思っております。私の方としては、契約するのは、あくまで柱の土地と柱の肩(ブレード)の肩とその周辺、そしてその柱を監視する監視施設くらいのとこかな、それと、もちろん進入路であったり、そういったものは契約の対象になると思っております。」(添付資料1参照:2021年9月9日町議会定例会一般質問議事録p26)
 また、2022年6月定例議会一般質問における米津町議の質問に対して、町長は「計画に必要な面積のみを貸し付ける、そもそもあれだけ大きな面積をどういう考えで貸すのか、大きな枠だけは何十万㎡とあるが、ここは貸すか、この面積はいかがかと、何十万㎡も貸すことはうちはない、当然必要なところだけを最低限貸す」と発言しました(議事録が未だ公開されていないため傍聴者メモによる)。
町が発行した賃貸証明書に記載されている町有林貸付けについて御社の見解を伺いたい。
・町長発言にあるように町有林は「分割して」事業に必要な最低限の面積を貸し付けられるものと、御社は解釈されているのか。
・あるいは、あくまでも一筆(例えば字床波10003-1の場合は412,617㎡)として貸し付けられるものと解釈されているのか。
・賃貸証明書記載の町有林貸付の面積について、町側と何らかの協議がされたか、否か。
B)アブサンショウウオの保護、湿原の保全について
現在、御社がすすめている(仮称)阿武風力発電事業の予定地は、絶滅危惧種アブサンショウウオの生息地内にあります(注1)。アブサンショウウオは環境省レッドリスト2020補遺資料では、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い絶滅危惧種ⅠB類(EN)に分類されています。また2022年1月には「絶滅のおそれのある野生動物の種の保存に関する法律」に関する法律施行令の一部が改正され特定第二種国内希少野生動植物種として追加されました。「分布域が限定されており、かつ、生息地等の生息、生育環境の悪化により、その存続に支障をきたす事情がある種」であることが選定の要件とされています。
 私たちは、御社の事業により、森林伐採、湿地開発、林道などの建設による森の乾燥化、工事により発生する濁水や土砂の流出、工事用道路による分断が予測され、事業予定地内のアブサンショウウオはじめ他の希少野生動植物の生息環境にも悪影響が出ることを懸念しています。
 上述の環境省レッドリスト2020補遺資料にも、アブサンショウウオの存続を脅かす要因として森林伐採、湿地開発、林道などの建設による森の乾燥化、工事により発生する濁水や土砂の流出、工事用道路による分断などが挙げられています。ところが、方法書には取り付け道路(作業道路、搬入路)の拡充や土捨て場の場所など具体的な工事計画が書かれておらず、工事が事業予定区域内の希少動植物の生育環境にどのような影響がでるのか、わかりにくいのでお尋ねします。
1)
 国の生物多様性基本法第六条には「事業者は、基本原則(添付資料2)にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、事業活動が生物の多様性に及ぼす影響を把握するとともに、他の事業者その他の関係者と連携を図りつつ生物の多様性に配慮した事業活動を行うこと等により、生物の多様性に及ぼす影響の低減及び持続可能な利用に努めるものとする」とあります。
 御社のHPはグループ会社である三菱HCキャピタルグループの環境活動:環境方針にリンクされており、そこには「生物多様性保全に貢献する自然共生社会をめざすため、(中略)自然資本へのインパクトの最小化に努めます」と記載されていますが、事業予定地内に生息するアブサンショウウオをはじめとする希少動植物の生存保護、生息地の保全に関して、御社の基本的なお考えをお聞かせください。
2)
山口県は方法書知事意見において「対象事業実施区域及びその周辺には、アブサンショウウオをはじめとした各種希少生物の分布情報があることから、専門家の助言を得ながら、適切に調査、予測及び評価を行い、希少生物等への影響を回避又は十分に低減すること」を求めています。御社は現在事業予定地において環境影響調査を行っていますが、動植物の調査対象にアブサンショウウオは含まれているでしょうか。含まれていないならば、アブサンショウウオの専門家の助言を受け、その生息状況を把握するための再調査を準備書の届け出、縦覧の前に行ってください。
 再調査終了後、すべての調査項目の調査結果を公開してください。
3)
事業実施によるアブサンショウウオへの影響を回避し保護するために、どのような保全措置を検討していますか、具体的に伺います。
・事前に生息状況を確認し生息が確認された場合、生息地を保護するために、予定していた工事を回避する、あるいは繁殖期を避けて工事をするなどの回避策は検討しますか。
・森林内に作業道路や搬入路を設置する場合、アブサンショウウオの生態に対してどのような工法の配慮を検討していますか。また、残土の捨て場所、処理方法についても未だに明らかにされて
いませんが、これも生息環境に大きな影響が出ると思われます。生息場所の確認のほかに、どのような対策を検討していますか。
・濁水の発生も生息環境に大きな影響が出ると思われます。濁水の処理についてはどのような対 処法を検討していますか。また、森林の乾燥化を防ぐために、どのような対策を検討していますか。
アブサンショウウオの生息保護と環境保全については、上記の配慮、対策の事後検証に加え、継続的なモニタリングも必要です。数年にわたる継続的なモニタリングの実施は検討してい
ますか。
アブサンショウウオの保護、湿原の保全に関する上記の要望に対し、誠実に対処していただかれますよう、何卒よろしくお願いいたします。
以上。
(注1)
 京都大学研究チームによる論文
 Systematics of the Widely Distributed Japanese Clouded Salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and Its Closest Relatives
Masafumi Matsui, Hiroshi Okawa, Kanto Nishikawa, Gen Aoki, Koshiro Eto, Natsuhiko Yoshikawa, Shingo Tanabe, Yasuchika Misawa, Atsushi Tominaga. Current Herpetology 38(1):32-90, February 2019:figure15
リンク:
Systematics of the Widely Distributed Japanese Clouded Salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and Its Closest Relatives (bioone.org)
【添付資料】
1)2021年9月9日町議会定例会一般質問議事録24~27頁
  リンク: 議会の議事録|山口県阿武町役場 (abu.lg.jp)
2)生物多様性基本法 第三条 基本原則
以上。